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映画『タブロイド』
            …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載




 事実とニュース。その解離が日々進んでいると、感じる人は多いだろう。様々な事情が複雑に絡み合った結果なのだとしても、事実とニュースの間に、「送り手と受け手双方のストーリー、お話への欲求」がだらりと寝そべっていることは確かだと思う。テレビも活字もネットも、同じ。文章の基本は5W1Hだそうだが、「HOW=どのように、WHY=なぜ」の要素が揃うのを待っていたら、遅すぎる。いま手に入る事実をピックアップして、それを部品にお話を早くつくらなくちゃ。だって、お客さんが待っている。早く知りたい、手短にわかりたい受け手と、そのニーズに盲従する送り手。そして事実は、遠ざかっていく。
『タブロイド』

 『タブロイド』は、ニュースの名のもとで、お話を売る、その商売の実態と焦燥を冷徹に見据えた映画だ。主人公のテレビリポーターと取材チームは、マイアミのテレビ局から南米へネタを拾いに来ているが、事実も正義も軽んじてるわけじゃない。お客さんにウケるお話を組み立てる一方で、事実をつきとめるために多大なリスクも負う。しかし彼らはやがて、むきだしの事実に、痛烈なしっぺ返しをくらうことになる。
 エクアドルが舞台のメキシコ映画。子供の連続レイプ殺人を素材に報道の欺瞞を暴くスリラー、なんて紹介をすると、正義派ジャーナリストが活躍するハリウッド映画に似て聞こえるが、そんな甘ちゃんな代物じゃない。殺人を熱っぽく官能的に描写し、貧しい社会や刑務所の実態を告発し、正義や功名心や名付し難い欲望を安易に色分けせず、それでいてテンポを失わず描ききる。三十歳そこそこでこの腕、セバスチャン・コルデロという監督名を記憶にとどめないわけにはいかない。主人公のジョン・レグザイモも、ぎりぎりのところで不快さよりも人間味を感じさせて、見事な仕事を見せる。
 『シティ・オブ・ゴッド』も手がけたアントニオ・ピントの音楽に腕をつかまれて南国へ運ばれ、そこから怒涛の15分。奇妙な儀式、壮絶なリンチ。この映画スゴいじゃん、という第一印象は最後まで裏切られない。誰もが多面的で、誰もが不可解。人や社会という集団への、監督のそんな見方は、フェアな一方で、静かな怒りにも満ちている。映画の最後、罰からも見離された罪の風景は、残像となって消えない。
 さて、この連載は今回で終了です。男性誌での映画欄の担当は初めてで、楽しい仕事になりました。また、どこかで。
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by hiromi_machiyama | 2006-02-25 22:18 | 雑誌原稿アーカイヴ
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放送作家・町山広美の日記
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