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映画『チャイルド・プレイ チャッキーの種』
             …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載



『チャイルド・プレイ チャッキーの種』
 
 この夏一本しか映画を観ないなら、選ぶべきは「チャイルド・プレイ/チャッキーの種」だ。親子の相克、結婚の現実、自分探し、血、臓物、マーサ・スチュワート、ホラー映画の名シーン、ゴシップ、笑い、受精。全部がつっこまれたこの映画は、分別してないゴミみたいにぐちゃぐちゃで、そしてなにより、面白い。
 「スターウォーズ」最新作と「宇宙戦争」、今年の夏を代表する2大作でも、父と子の関わりが重要なファクターになってるそうだが、「チャッキーの種」だって家族を最大のテーマにすえている。ホラーなホーム・コメディなのだ。それに、2大作の後味は爽快とは言えないらしいが、「種」は違う。死体の数も実は、2大作よりずっと少ない。善男善女なら、「種」を観るのが当然の選択でしょう。
 これで5作目となる「チャイルド・プレイ」。シリーズ最高傑作と激賞された前作から、殺人鬼の魂が宿る人形、チャッキー自身が主人公になり、突き抜けた面白さがでてきた。今回はそのチャッキーと、人間時代からの恋女房ティファニーが人生観、子供の教育方針などでおおいにもめつつ、死体の山をつくっていく。氷川きよし似のかわいい我が子が、男子か女子か、そんなことですら意見が合わない。家庭不和でイライラすると、普通の人が酒を飲みたくなるように、彼らはいつもにも増して、人の首を切ったり臓物を引きずり出したくなるわけで。
 三等身の人形夫婦の痴話ゲンカ。確かにバカだけど、死人が生き返ってさわやかに愛を語る、最近流行りのゾンビ系恋愛物語に泣くより、こっちで笑いたい。
 精子が走り回る、根元敬の漫画みたいなオープニングから、映画の勢いは止まらない。辻褄なんぞ気にかけさせない。シリーズの生みの親である脚本家、ドン・マンシーニが始めて監督を務め、チャッキーへの愛をぶちまけているからだ。
情熱の濃さが違う。
 そしてチャッキー以上の愛を捧げられたのが、ティファニーの声を担当する女優、ジェニファー・ティリー。彼女こそがこの映画の主役。本人役でも登場し、野心まんまんの極太ビッチ女優として、自分をめいっぱい笑い者にしている。
 ぜひ、前作「チャッキーの花嫁」も観て、この夏は納涼チャッキー祭りで盛り上がってほしい。さらには人にしつこく勧めて、「あんたの映画の趣味って幼稚で下品」と罵られるまでが遠足です、じゃなくてチャッキー祭りです。さあ、行ってらっしゃい。
by hiromi_machiyama | 2006-02-25 22:30 | 雑誌原稿アーカイヴ
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