カテゴリ
日記
メールはこちら      
雑誌原稿アーカイヴ
活字が・書いた・テレビ
以前の記事
映画『親切なクムジャさん』
            …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載





『親切なクムジャさん』 

 血みどろ復讐三部作の完結編はなんと、童話だった。正確には、お子様用に書きかえられる前、童話よりも民話に近いか。残酷で淫靡、それなのに陽気で、すっとぼけた笑いをはらみ、甘く懐かしい。
 二十歳で子殺しに関与させられた女、クムジャが復讐を遂行する物語。『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』という前2作のような、アクティブな映画を期待すると少々肩透かしを食らう。パク・ヒャヌク監督最大の持ち味、悪趣味もやはり、少々ながら抑えめ。その分、視覚的快楽への耽溺は、前2作以上だ。
 画面に溢れかえる極彩色、幾何学模様。その美的感覚と、過剰で躁病的な語り口に、ゲイを公表しているスペインの監督、ペドロ・アルモドヴァルの初期に通じるものを感じた。また本作での、紅顔の美少年キム・シフの美しすぎるアップや、神に祈るクムジャさんの顔が光る場面などは、日本のCM界もパクったフランスのゲイなアート・デュオ、ピエール&ジルの作品が、間違いなくネタ元。ところが、監督自身はゲイどころか、本作で少女に猫メイク、『オールド』では少女に天使の羽をつけさせ、ロリコン垂涎の演出を真正面からやる人なんですが。
 初期アルモドヴァルの代表作に『バチ当たり修道院の最期』があるが、クムジャさんの復讐も、「神に頼むより、泣かされた者が自分で相手にバチをあててやりましょう」という、情動の素直すぎる結果で、復讐よりもバチに近い。そしてバチだから、「眼には眼を」の論理で、容赦なくえげつない。バチ当てに協力するのは、刑務所の仲間たち。女王として君臨する憎き怪物女囚を始末してくれた、クムジャさんの親切、その恩に仲間たちは報いようとするのだ。
 やられたからやり返す。恩には報いよ。親切と復讐、その相似形ぶりを見せつけるのが監督の狙いだ。子殺しを持ち出したのも、子供が本来は親にとって、報いを必要とされない、無償の愛の対象であるべきだからだろう。
 三部作の最後、復讐をどう語り終えるるか。監督の頭に早くから結論は出ていたはずで、結論のある弱さを、童話の味付けで補ったあたりは巧みだと思う。しかし、展開の少なさを埋める分だけ小ネタを盛り込みすぎたし、中だるむ部分もあり、無駄に複雑になった感も。監督自慢の構成力は乱れた。
 とはいえ、楽しんだ。次回作は、自分をサイボークと信じる少女の精神病院での話。仮題は「サイボーグだけどいいの」。狂った話になりそうで、わくわく。
[PR]
by hiromi_machiyama | 2006-02-25 23:00 | 雑誌原稿アーカイヴ
<< 映画『シン・シティ』     ... 映画『チャイルド・プレイ チャ... >>
トップ

放送作家・町山広美の日記
by hiromi_machiyama
ライフログ
フォロー中のブログ
メール
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧