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映画『シン・シティ』         
             … 「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載





『シン・シティ』

 この映画で二刀流の殺し屋を演じている、億万長者ロッキー・「ベニハナ」・青木の娘にして元モデルのデボン青木は、数年前に「桃の天然水」のCMに出演していた。パリコレなんぞ全く縁のない、ミラノ・コレクションと聞いたらプロレスラーを先に思い浮かべてしまうような輩は、その顔を見て、リアル「うしろの百太郎」みたいな女がどうして美人ぶってるんだ、と驚いたはずだ。おでこが広すぎて平べったいヘンな顔。でも、そのヘンな顔が、この映画では美しい。
 『シン・シティ』は全編が、劇画をスクリーンに移植したような映像になっている。アメコミを原作に、作者を共同監督に迎えただけでなく、原作の各コマをそのまんま俳優に演じさせてCG加工し、モノクロの動く劇画に仕立てた。監督ロバート・ロドリゲスの、原作に対する愛情と忠誠が、アニメと実写の中間地点に新たな表現手法を誕生させた格好だ。
 シン・シティ=罪の街を舞台に繰り広げられる、3つの物語のオムニバス構成。どれもが復讐と殺戮の物語で、肉片や臓器の一部が幾度となく画面を飛び交う。
グロくないとは言わないが、これは動く劇画なので余計な生々しさはない。血の赤など限られた色がモノクロ基調の中にポイント使いされて美しく、時にサイレント映画の優美さすら漂わせる。
 豪華キャスト勢ぞろいの中、図抜けてかっこいいのがクライヴ・オーウェン。やさぐれ男の湿った色気に、やられた。
 原作に忠実を誓っているのは、セリフも同じ。ロドリゲス監督の友達、タランティーノがバイト監督を務めた、生首運びのシーンなど笑いどころもあるものの、基本的にはフィルム・ノワール調。というか、これまたむしろ劇画調と指摘したくなるような、キメゼリフ満開のモノローグだらけ。鼻白む人もいるだろう。でも、てらいのないキメっぷりは、微笑ましくもある。何度も降る雪といい、哀愁過剰がこの作品の持ち味なんだし。
 特殊メイクで完全に劇画キャラと化したミッキー・ロークやブルース・ウィリスの、「やりきった」感たっぷりの濃い芝居も微笑ましい。ジェシカ・アルバ始めエロい女優がひしめき、女は娼婦とストリッパーだけ、しかも性格のいい娘ばっかで巨乳、という設定も、男の愚直で稚拙な願望全開でこれまた微笑ましい。
 義理と人情。背中に哀愁背負って戦う男、菩薩な女。男の夢いっぱいの劇画ワールドに溺れる2時間。デートには使わないのが無難です。
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by hiromi_machiyama | 2006-02-25 23:08 | 雑誌原稿アーカイヴ
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