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映画『ビー・クール』             
            …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載




『ビー・クール』

 草野仁には必見の一本である。なにしろこの映画の屋台骨をワキからぐぐっと支えているのは草野憧れのプロレスラー、ザ・ロックなのだ。役柄は、ゲイで俳優志望の用心棒、しかもちょっとおバカさん。オーディション用に女子高生スポ根映画「チアーズ」の一場面をひとり二役、ムービーオケ状態で乙女チックに演じ笑わせる。笑いの心得あり、で格闘家あがりのアクション・スターという枠は蹴破った感じ。演技にバリエーションがないスティーヴン・セガールなんか完全に超えたことは、間違いない。
 ザ・ロックの他にも、スターが多数出演。エアロスミスのスティーヴン・タイラーまでご本人役で登場する、お祭り映画。ジョン・トラボルタ演じる映画マニアの借金取立屋、チリ・パーマーが映画界を手玉に取ってみせた『ゲット・ショーティ』の続編である。
 裏社会のプロだが、ショービズ業界のシロウト。そんな主人公チリを通して、山師だらけの業界のうさんくさい実態をからかう狙いは二作共通だが、粋な仕上がりの前作に比べ、ロサンゼルスの音楽業界に乗り出す本作は大味だ。やくざと音楽興業、業界の体質の近さが原因かもしれない。
 スター発掘のお話だから、泥くさくなるのは仕方ないとはいえ、若く貧しい美少女に圧倒的な才能が、なんて設定は王道過ぎたような。それに、ギャングスタ・ラップのスターの銃撃事件が当たり前に起きる音楽業界が舞台だから、ドンパチまでのタメがなく、山師同士のクールなかけひきの面白みも出し切れず。
 とはいえ、作家エルモア・レーナードが手がけた脚本には、笑いがちりばめてあって楽しめる。業界ネタ、音楽や映画のパロディネタ、そして人種ギャグ。「東洋人には音楽のセンスがない」というネタが随所にあり、ミス・バンコクなる超ダサい歌手が登場するのだが、エンドロールでこれを演じたのが日本人と判明。しんみりさせられてしまいました。
 ラップデュオ「アウトキャスト」の片割れや、最近コメディで当てまくっているヴィンス・ボーンなど、ワキのメンツはいい仕事をしてる。でも、主役のトラボルタがはじけきらない。「パルプ・フィクション」以来のユマ・サーマンとのダンス・シーンも、輝かない。撮り方に愛情がないのは、高額なギャラを要求して降板騒ぎを起こした結果だろうか。
 ハマリ役を大事にしないこの人の先行きは、暗い。エンドロールに並ぶ、「トラボルタ」様担当スタッフの行列がむなしい。
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by hiromi_machiyama | 2006-08-16 18:20 | 雑誌原稿アーカイヴ
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放送作家・町山広美の日記
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