カテゴリ
日記
メールはこちら      
雑誌原稿アーカイヴ
活字が・書いた・テレビ
以前の記事
映画『チーム☆アメリカ ワールドポリス』
            …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載



『チーム☆アメリカ ワールドポリス』

 世界の警察を気取りやがって、この人殺し集団め。世界のあちこちからの米国政府および米軍に対するそんな批判に、「イエスっ!アイム・ワールド・ポリス」と白い歯を見せて答えるのが、この映画の主人公、チーム・アメリカの面々。テロリストを少し殺すついでに、一般人の死体の山をつくっちゃう。「だって自由を守るためだから仕方ないじゃん」と銃火器乱射し放題な彼らの、アバウトでまぬけな活躍を描くこの映画、「くっだらねえ」とバカ笑いを誘いまくる。
 登場人物は全部、ひょこひょこ動くあやつり人形。でも表情は微細だし、背景などには職人の見事な仕事が行き渡っている。監督以下、アニメ「サウス・パーク」のスタッフが多数参加。幼稚なことが大好きな人たちなので、男子が妹の人形でやったような、首を吹き飛ばしたり血みどろにしたり、いろんな体位でセックスさせたり、という人形遊びの基本を最高の技術で見せてくれる。すてき。
 これは、アメリカ批判の映画ではない。政治批判をするつもりがないのは、人形劇という手段を選んでおきながら、実在の権力者や政治家は金日成くらいしか登場させない点で明らか。その一方で、マイケル・ムーア監督や反戦活動で有名なハリウッド俳優を、「おまえら、自分がりこうだってことをアピールしたいだけだろ」とばかりに惨殺しまくり。それでいて、世界の警察チーム・アメリカを筋肉バカとして描き、アメリカ的価値観に茶々を入れる。さらには、外国人のセリフを全部タモリのハナモゲラ語みたいなニセ外国語で済まし、外国を理解しようとしないアメリカ人の排他的価値観を自ら請け負う偽悪ぶり。
 なんともややこしい。
 「どうせ世の中なんて変わんねえ」の苦い思いが、「左翼的な志って優等生気取りで恥ずかしー」を経て、右翼的な主張に流れ込んじゃう、というのはここ数年ネット上に多数見かける現象だが、それがこの映画の内にも起きている。とはいえ、愛国にひた走るほど短絡的でもないトレイ・パーカー監督はなぜか、執拗なまでのホモいじりに逃げ込むのだ。
 右も左もホモも女も筋肉野郎もインテリも全部バカばっか。そう言いつつ唯一、愛を込めて描く登場人物がいる。哀愁を漂わす、キュートな金日成将軍ちゃん。「世界は一度崩壊するしかない」とつぶやく孤独な将軍ちゃんに、監督は自己投影してるように見えた。
 そんな監督の「幼稚上等!」な破壊願望に、自分の後姿を垣間見て恥ずかしさに悶絶する、ひねくれ者の淋しがりや以外は、バカ笑いだけで終われる映画です。
 
[PR]
by hiromi_machiyama | 2006-08-16 18:38 | 雑誌原稿アーカイヴ
<< 映画『オープンウォーター』 映画『ビー・クール』     ... >>
トップ

放送作家・町山広美の日記
by hiromi_machiyama
ライフログ
フォロー中のブログ
メール
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧