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映画『オープンウォーター』
            …「アサ芸エンタメ!」05年?月号掲載




『オープン・ウォーター』
 
 この映画は『ジョーズ』ではなく『世界残酷物語』や『グレート・ハンティング』の系譜に属する。つまりは、見世物の要素がより強い映画。ごく普通のカップルが大海にとり残されて、人食い鮫に襲われますよ、マジで食い殺されちゃうよヤバいよコワいよ、さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、ってわけだ。  
 「実話である」という字幕から始まるが、「事件の後に残されたビデオ映像」てな設定でこの映画をつくることもできたろう。でもそれじゃ、まんま『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』だし『食人族』だ。
 そもそも、インディーズで活動していた監督&プロデューサー夫婦が、『ブレア』の大化けを目にして、ひねりだした企画らしい。この夫婦の前作をネットで調べてみたが、いかにも凡庸。「老後が心配。うちらも四十歳になる前に一発当てなあかん。あんた、なんかいいネタないの」と、プロデューサーである嫁が監督である夫のケツを叩く構図が容易に想像、いや邪推できる。
 そして目をつけたのがダイビング・ツアーの最中、海に取り残された夫婦が消息を断った事件。鮫に食われたか、それとも保険金目当ての擬装か。死体が発見されず諸説あるそうだが、映画は海に閉じ込められる恐怖に焦点を当てた。その恐怖を描くためにとった手段は、単純明解。
 稲川淳二を虎のオリにいれるがごとく、演技する俳優の周囲に本物の鮫を集めた。見世物の王道を行く手法。「えー、ただいま本物の人食い鮫に食われそうになりながら、演じております」という口上が、私の耳には終始聞こえてきた。
 そんな口上で、がさつな演出や映像をドキュメントっぽさにすりかえつつ、保険もかけられないままの過酷な撮影でリアルな恐怖をかもしだし(予算がないから逆に都合がよかったはず)、必然性のないヌードもしっかり盛り込んで、観客の欲望を直截に刺激。
 そうしておきながら、取材には「これは男女の関係についての映画です」とすましてみせるプロデューサー、中華系らしきこの嫁に、非常に興味をひかれる。資料によると、現場では専門家がマグロの肉塊で鮫を刺激し、その動きをコントロールしながら撮影を始めたものの、専門家も監督もさしおいてガンガン肉塊を投げ、鮫を激しく興奮させ俳優をびびらせたのが、この鬼嫁(邪推)だったという。怖いです。
 すでに各国でヒット、大化けしたそうだが、映画ではなく、まんまと億万長者に化けた鬼嫁の影ばかりが記憶に残った。
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by hiromi_machiyama | 2006-08-16 18:45 | 雑誌原稿アーカイヴ
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