ド久々の更新です。
5月に東京、先週までは大阪で催されていた
「安斎肇還暦博覧会 anzai expo 60」。
そこで展示された、私とソラミミストとのなれそめを振り返っての原稿を、以下に。
「ソラミミスト:エピソードゼロ」
尻はそろそろいいか。
90年から『タモリ倶楽部』の構成に就いた私は、92年にはその宿題に悩んでいた。
やはり90年に、踊る潜在意識こと麿赤児がお悩みをダンスで癒す『瞑想アワー』とともにたちあげた、女の尻を芸術として品評する『今週の五ツ星り』というコーナーを、尻つぼみにならないうちに閉じたい。
『瞑想アワー』は『瞑想刑事』に衣替え、麿刑事とタモリ刑事が犯人を追いつめた肝心なところで瞑想をはじめてしまう‥そんなバカドラマの台本を書くのは楽しかったが、まあ要するに迷走していた。
新コーナーが必要だ。
今度は、映像とBGMのミスマッチを面白がろう。
アイデアは、『タモリ倶楽部』の演出を指揮する、製作会社ハウフルスの菅原社長のものだった。
どんな企画に煮詰めるか、まとまらないうちに、4月放送分の収録が近づく。
『あなたにも音楽を』なるタイトルのもと、いくつかの方向性を試すことになり、そのネタのひとつにアース・ウィンド・アンド・ファイヤーの『ゲッタウェイ』のサビのコーラスが「青森県」に聞こえる、というのがあった。
洋楽の歌詞がへんな日本語に聞こえるなんてラジオでは定番で、『タモリのオールナイトニッポン』でもやっていたと記憶するが、映像が加わることでもっと面白くなるんじゃないか。
てなところは実は、やりはじめてからよくわかるのだが。
企画を試すにあたり、タモリさんに対してネタをぶつける役割を誰がやるか。
なにしろまだ方向が定まらず自信がないから、必要なのは叱られ役だった。
叱られるのが似合う、自分でネタを紹介しておいてタモリさんに「なんだ、これ」と言われたら「ですよね」と調子良くのっかって悪びれない、そんな人材はいないか。
そして隔週で、時間も場所もバラバラな「流浪の番組」の収録につきあえる、奇特な大人はいないか。
『五ツ星り』スタート時、知り合いのなかから山田五郎を見繕った私に、期待がかかった。
そんなダメな大人、安斎肇しか思い浮かばない。
けれども、固辞しやがる。
収録日が来てしまい、私が出演を押し付けられた。
仕方なくやったが、次の収録までに安斎肇をひっぱりださなくては。
当時の私はアトピーの症状がひどく、しばしの休業を希望していたので、なんとしても人に押し付けたかった。
どう説得したかは覚えていない。
泣きついたのか脅したのか騙したのか。
あれからもう20年。
コーナーは『空耳アワー』として、安斎肇はソラミミストとして、なんだか当たり前のように存在している。
そして案の定、安斎肇はタモリさんに叱られている。ネタではなく遅刻で、だが。