映画レビュー『オーシャンズ8』
          『and GIRL』2018年8月号

峰不二子もいいけれど、そうじゃない女泥棒を待ってました。
「ルパ〜ン♡」なお色気ばかりが武器じゃなく、男の上前をはねるだけでもない。
男を泣かすのは痛快だけれど、いつも横入りでかっさらう、卑怯なやり方しかできないなんて。
もしかして、女をなめてるんじゃない?

『オーシャンズ8』は、男たちがイカす泥棒チームを組んできた「オーシャンズ」の全員レディ版。
そして、シリーズの最高のヒットになっています。興行成績でも、女が男を負かしちゃいました。

ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットに代わってチームの中核になるのは、サンドラ・ブロックとケイト・ブランシェット。
ともに60年代生まれです。男性コンビから3歳ほどしか若返ってない、ほぼ50代!

このシリーズは、盗みの面白さと同じくらい、男たちのかっこよさと可愛らしさが魅力。
そのレディ版をつくるにあたって、女たちのかっこよさ可愛らしさを、男の目から見慣れた範囲にとどめてしまったら、ただの男女入れ替え版にとどまってしまう。
例えば、メンバーを若いモデル系美人だけにしてしまうとか。

でも、この映画の製作陣は、自分たちがやるべきことをよくわかっていました。
比べるのも残念ですが、戦艦まで女の子に擬人化して、若い可愛い女の子のイメージを消費する日本の例とはまるで違う。
いろんなタイプのかっこいい女が出てきて、女が見てかっこいいと思うポイントにしっかり目が配られています。

「男が憧れる」から「女が憧れる」へ、は設定についても同様。
用意された盗みの舞台は、ニューヨークのメトロポリンタン美術館で開催され、世界中のファッションセレブが集う、メットガラ。
毎年、ドレスのテーマが設定され、誰が何を着てあらわれたか、SNSでアカデミー賞よりも大騒ぎになる超豪華パーティーです。

このシリーズでは盗みを通して、大金が飛び交うカジノの裏側がわかるのもお楽しみでしたが、今回はメットガラの裏側が。
ドレスやアクセサリーの提供はそんな仕組みになってるのね、とゴシップ的興味をくすぐってきます。
人気デザイナーや有名編集長も、パーティ客としてご本人登場。盗みの行方にハラハラしつつチェックするので、見逃し要注意。

サンドラが演じるのは、クルーニーの妹。犯罪一家に育った盗みの天才のはずが、恋人に騙されて服役していたものの、出所して大勝負を仕掛けます。
パートナーのケイトと狙うのは、人気女優が身につける国宝級のカルティエのネックレス。

その、女優の地位にも男にも強欲な女優をいやーな感じ増量で演じてみせるのはアン・ハサウェイ。
あらためて、頭のいい人なんだと感服させられます。
そして、東海岸最高のハッカー役にはリアーナ。
世間の価値とか常識とか関係ないっす、な振る舞いがイカしてる。

韓国がルーツのラッパー、オークワフィナや、脚本を書きコメディアンでもあるインド系女優、ミンディ・カリング、そして濱田マリっぽいコテコテ演技で笑いをとってくヘレン・ボナム=カーターと、その他のメンバーも配置がうまくいっていて、シリーズで一番少ない「8」はちょうどいい塩梅。

ファッションが素晴らしく楽しいこの映画で、ぬきんでてかっこいいのは男装の麗人っぽいスタイルでキメまくる、ケイト・ブランシェット。
今年はカンヌ映画祭の審査委員長もつとめましたが、リーダーがこんなに似合う人は男優にもそうはいない。
その姿に惚れ惚れして、パンツスーツを買いに走りたくなります。


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by hiromi_machiyama | 2018-08-11 12:07 | Trackback
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